先日、日経1面に後継者難を理由に中小企業の廃業を危惧する記事がありました。
2016年の廃業は3万件弱(29,583件、東京商工リサーチ調査)ですが、2025年には6割以上の経営者が引退の目安となる70歳を超え、その約半数にあたる127万人が「後継者未定」と回答しているようです。また、60歳以上の経営者の7割が「自分の代で事業を辞める」と回答しており、国内企業の9割を占める中小企業の事業継承は、経済全体からも非常に大きなテーマとなっています。
事業継承の準備を既に行っているという経営者は、60歳代で4割程に止まり、引退目安の70歳代でも半数しかおらず、事業継承がスムーズにいかない状況がはっきりと表れています。
スムーズにいかない要因は、事業を継がせる子供がいない、子供が継ぐ気がない、後継者として子供は相応しくないといった「やはり身内に継承させたいけどうまくいかない」という状況が多いと思われます。
もし、身内が継がない場合は、次の選択肢として番頭さんなど社内から後継者候補を探すこととなるでしょう。後継者が身内でない場合、株式の問題がでてきますが、オーナーが株式をもって配当をもらい、また経営に一定の影響力を持ち続けるという手法もあります。
どうしても身内や内部昇格による後継者がいない場合は、第三者に会社を売却する、外部から経営者を招聘するといった方法で事業を継承してもらうことになります。
売却の場合は、買い手をどう探すか、売却額などが問題となります。特に中小企業のM&Aの場合は、自社の強みと弱みを把握し、会社所有と個人所有の資産・負債を明確にすることが重要で、公私混同が甚だしかったり、強みのない会社の引き継ぎ手はありません。
後継者を外部から招聘する場合は、後継者に値するような資質を持ち経営に意欲ある人と出会えるかがポイントです。後継者候補には、取引関係を通じた付き合いで出会うのが自然ですが、そのような縁に恵まれるのはまれですから、高い資質を持つ人材の確保や企業と後継者候補を結び付ける仕組み等について、国や役所がより環境整備を進めるでしょう。
一方で、社外からの後継者招聘の場合は、親族や社内といった周囲の関係者の理解を得ることが比較的難しい場合があったり、経営理念、創業の理念といった最も大切にしたいことをどう理解してもらって引き継いでいくかが課題となります。
実際の事業継承には、経営ノウハウやビジネスモデルといった経営そのものの承継を確実に行うことに加え、税負担を考慮した資産の承継をいかにスムーズに行っていくか、そして、経営者の想い、特に創業経営者は会社に対する思い入れはとても強いので、これをしっかり継承できなければ経営や資産の承継が円滑に出来たとしても長く続かないことも多く、形だけの事業承継にならないよう気をつけなければなりません。
事業継承は、中小企業にとって本当に重大なことですので、早め早めにご検討されることをお勧めいたします。またご相談いただければ全力で支援させていただきます。