小規模宅地等の特例をしっかり理解するために、具体的な例を挙げた計算方法を確認しましょう。特に、複数用途の土地を相続した場合は、限られた枠の中でどの用途の土地を優先するかで結果が変わることとなります。
まず、複数用途の宅地の場合でも、特定居住用宅地と特定事業用宅地が対象となる場合なら、以下の要件で特例を完全併用でき、最大730㎡の評価額が80%減となります。
特定事業用宅地の面積の合計≦400㎡ かつ 特定居住用宅地の面積の合計≦330㎡
これはそれぞれの要件以上の面積だとダメということでなく、例えば、事業用宅地が450㎡、居住用宅地が350㎡の場合は、それぞれ400㎡と330㎡はこれが適用されて80%減となり、残りの50㎡と20㎡は評価額どおりということです。
そして、これ以外の場合には限定併用となり、以下の計算式を使ってそれぞれの用途の宅地適用面積を算出することとなります。
A「特定事業用宅地の面積の合計✕200÷400」+B「特定居住用宅地の面積の合計✕200÷330」+C「貸付事業用宅地の面積の合計」≦200㎡
要は、A部分の計算結果、B部分の計算結果、Cの合計が200㎡以内になるようにしなければならないのですが、計算結果が200㎡以内であり、実際の適用面積が200㎡以内ではありません。
ちょっと解りにくいので、具体的に計算してみましょう。
事業用400㎡、居住用180㎡、貸付用180㎡という複数の土地を相続するとします。
①居住用を優先し貸付用を選択する場合
Aは0、Bは109.9(180㎡×200÷330)、Cは90(200-109.9)
居住用180㎡、貸付用90㎡の計270㎡が対象となります。
②事業用を優先し貸付用を選択する場合
Aは200(400㎡×200÷400)で上限となり貸付用は対象外。
事業用400㎡のみ対象となります。
(前述のとおり事業用と居住用なら計580㎡に併用できます)
③貸付用を優先し事業用を選択する場合
Bは0、Cは180、Aは40(200まで残り20なので、x×200÷400=20の一次方程式よりx=40)
貸付用180㎡、事業用40㎡の計220㎡が対象となります。
④貸付用を優先し居住用を選択する場合
Aは0、Cは180、Bは33(200まで残り20なので、x×200÷330=20の一次方程式よりx=33)
貸付用180㎡、居住用33㎡の計213㎡が対象となります。
このように、どのように組合せするかにより適用面積は変わり、それぞれの宅地の評価額も異なります。もちろん、宅地以外の他の資産も含めた総合的な判断が必要となりますので、税理士にご相談いただくことを強くお勧めいたします。
次回も、もう少しこの小規模宅地等の特例についてご案内します。