相続について9回に渡って概要をご案内してきました。これらが基本となりますが、他にもスポット的な話として、課税資産を減らすという対策についても、最後に簡単にご案内したいと思います。

 

○一時払い終身保険の活用

生命保険の保険金には法定相続人1人あたり500万円の控除がありますので、法定相続人を受取人として、相続財産から一時払いで終身保険に加入しておくと、その分を確実に節税できることとなります。

 

○生前贈与

生前贈与の暦年贈与とは、年間110万までの贈与は非課税となり申告も不要ですが、多くの財産を分割して贈与したとみなされないこと、贈与を明確にしておくことが必要で、そうでない場合は課税されることもあります。

そして、相続開始前3年以内の贈与は全て生前贈与でなく相続財産として計算されますので早めの対応が必要となります。

また、生前贈与には相続時精算課税制度というものもあり、生前贈与したものを相続時に相続財産と合算して計算するというもので、アパートなどの収益物件や値上がり確実な不動産などでは有効な制度です。

 

○子や孫への住宅資金贈与、教育資金贈与

住宅資金贈与は、20歳以上の子や孫に住居用の家屋の新築、取得又は増改築等の資金を贈与する場合に、一定の限度額までは贈与税が非課税となる制度です。時期や要件で限度額は変わります。

教育資金贈与は、子や孫に教育資金として贈与する場合は1500万まで非課税となる制度です。

更に、子や孫に対しては、H27年4月に4年間の限定措置として、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置も創設されました。20歳以上50歳未満の子や孫に対して1000万(結婚は300万)まで贈与税が非課税となります。

これらの制度を活用すれば、相続財産を低減することができますが、教育資金や生活費については、そもそも必要な都度、子や孫に贈与しても原則非課税ですので十分検討して進めることが得策かも知れません。

 

○手持ち現金で土地を買う

同じ1000万でも、現金で持っている限りそのままですが、1000万の土地を購入した場合、1000万の価値のある土地でも相続税評価額としては、70%から80%の路線価で評価されることとなります。固定資産税などのコストもかかりますが、相続財産の低減には有効です。

 

○養子縁組で相続人を増やす

税制改正により相続人1人あたりの基礎控除が600万に減ってしまいましたが、相続人自体を増やせば、その分の控除額は増えるという話です。前述の生命保険金500万も適用できます。

現実的に増やそうとした場合は養子縁組となり、実子がいると1名、実子がいないと2名まで相続税の計算に反映させることが出来ます。

税務上、これが認められるためには、養子縁組の理由は正当なものが必要で「節税のため」といった理由は原則NGです。

<追記>1月31日に最高裁で「節税目的の養子縁組でもただちに無効とは言えない」との判決がありました。ただし相続税法では、「相続税の負担を不当に減少させる結果となる場合は税務署長の判断で養子を算入せずに税額を計算することができる」と定められていますので、養子縁組が有効だから相続税にも無条件に適用されるということではありません。

 

○お墓や仏壇の生前購入

お墓や仏壇といったものは非課税財産となりますので、購入予定があるならば生前購入することで相続財産を低減することができます。

純金製の仏像とかおりん等もありますが、このようなものは骨董的価値や投資対象とされて課税される可能性が高いので注意下さい。

以上のようなものがありますが、相続対策で最も必要なことは総合的な対応です。お一人お一人の状況によってベストな対応は異なりますので、実際の対応は税理士にご相談されることをお勧めいたします。