既にご承知のとおり相続税改正が行われ、基礎控除額が「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」から「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に大幅に縮小されました。そのため、これまでは相続税が課税されなかった方にも課税されるケースが大幅に増えると予想されています。

改正前の2011年の相続税課税割合(死亡者数に対する課税対象の被相続人数)は全国平均で4.1%だったのですが、改正により地価の高い東京23区では4人に1人が課税され、他の主要都市でも10%以上になるといった予測もあります。

財産の多くを不動産が占めるケースが多いですが、これらの不動産が自宅や事業用土地の場合には、継続使用しなければならないケースが多く、相続税の支払いのための現金を別途工面する必要が生じることから、この対策を検討しておかねばなりません。

しかしながら相続対策で最も大事なことは、遺産相続争いの対策をしっかりとやっておくことです。
「うちは遺産なんて少ないからそんな心配いらない」と思われる方も多いと思いますが、実は、多くの遺産を持つ世帯ではなく相続税が課税されない世帯でこそ争いが多いという状況になっているのです。
家庭裁判所における遺産分割事件の内訳をみると、総数8,740件のうち遺産総額1,000万円超5,000万円以下が3,797件で最も多く、次いで遺産総額1,000万円以下の2,824件と、相続税が課税されない世帯の訴訟が全体の約4分の3を占めています(2012年度司法統計年報・家事事件編)

相続税が課税される遺産を持つ場合には節税対策や納税対策が重要となりますが、相続税がかからない遺産でも、その分け方をめぐって多くの争いが起きていますので、親族が争わないための「争族対策」は、皆さんが必ず考えないといけないことです。
では、どのようにすれば良いのでしょうか。その基本は、
・被相続人の意思を遺言書などで明確にしておくこと
・遺産を平等に分けやすくしておくこと
・遺産を誰かに多く残したい場合はその根拠を明らかにし、遺言書として作成しておくこと
です。
財産が自宅だけという場合には、その処分方法まで考えたり、自宅を相続した方と他の方の合意方法まで考えておくことも必要でしょう。

以上、「相続対策」や「争族対策」は自分には関係ないと思わずにちゃんと考えてみましょう。そのためにも、まずは、遺産は何がどれ位あるか、把握から始めてみてはいかがですか。